研究者情報
⽇⽴北⾼等学校4班 川⼜あさひ 嶋⽥瑠南 鯉渕來未 萩原知⾹ 筑波⼤学TA 末武⼤和 井出 裕⼆ ⽩⿃春菜
近年,都市計画において,住民の生活の質の向上と,災害時における安全性の確保は重要な課題となっている。
公園は,日常的なレクリエーションや身体能力向上の場であると同時に,緊急時には指定避難場所として機能する公共性の高いインフラである。
しかし,無計画な公園配置は,地域住民間で利便性の格差を生み,特に遠隔地に住む住民の利用機会の損失や,
災害時の避難経路の長期化につながる可能性がある。実際に,体力合計点の経年変化データからも,
青少年を中心とした体力低下の傾向が確認されており[1],誰もが容易に利用できる環境整備が求められている。
このような背景から,全ての住民が公平に公園の恩恵を受けられるように,その配置を最適化する必要がある。
本研究の目的は,この問題に対し,最大利用距離の最小化という最適化基準を設け,需要地(住民)から公園候補地までの距離を最小にする最適な公園配置を,
定量的なモデルを用いて導出することにある。
本研究で取り組んだ公園配置の最適化問題は,施設配置問題の一つとして捉えられ,以下の通りに定式化される。
本モデルは,最大利用距離を最小化し,同時に各需要地(住民グループ)が必ずどこかの公園を利用し,
かつ各公園の収容人数の制約を満たすことを目的とする。
全ての需要地(住民グループ)から利用する公園までの距離のうち,最も遠い距離 T を最小化する。
| min T |
| ∑i∈I yij = 1 |
| ∑j∈J Pjyij ≤ Ciup (i ∈ I) |
| ∑j∈J Pjyij ≥ Cilow (i ∈ I) |
| yij ≤ xi (j ∈ J,i ∈ I) |
| dijzij ≤ D (j ∈ J,i ∈ I) |
| yij ≤ zij (j ∈ J,i ∈ I) |
| dijzij ≤ T (j ∈ J,i ∈ I) |
本研究では,定式化された最適化問題を数値実験によって解くために,人工的な都市モデルを作成し,以下の要素を設定した。
シミュレーション環境として,二次元平面に以下の3種類のデータをランダムに配置した。
① 需要地(住民グループ):公園を利用する主体であり,このモデルでは集合 J として定義される。
② 公園候補地:公園が設置される可能性のある場所であり,このモデルでは集合 I として定義される。
③ ランドマーク:公園の利用に影響を与える周辺施設(駅,学校,病院,スーパー,公民館,図書館,コンビニ)。
公園配置の決定において,周辺にあるランドマークが公園候補地の魅力度や利用頻度に影響を与えることを考慮した。
ランドマークが公園候補地の周囲に及ぼす影響を以下の表に基づき -3 から 3 の範囲で設定し,
候補地の初期選定(間引き)に利用した。
以上より,下記のような人工データを得られる。
本研究では,制約条件の厳しさが最適解に与える影響を比較するため,
公園の受け入れ人数の上限・下限を変化させた3つの設定ケースで実験を行った。
① 上限:100 人,下限:20 人
② 上限:40 人,下限:10 人
③ 上限:200 人,下限:10 人
第3章で設定した3つの異なるパラメータにおいて数理最適化モデルを解き,
目的関数値である最大利用距離 T の最小値と,そのときの最適な公園の配置を可視化し,比較した。
① 上限:100 人,下限:20 人の結果:T = 11.42

② 上限:40 人,下限:10 人:T = 18.89

③ 上限:200 人,下限:10 人:T = 10.72

以上より,公園の受け入れ人数の上限下限の値と得られる解の質について考察する。
設定1を基準として考えると,設定2は利用人数の制約がより厳しい。その結果,細かな公園が多く設置され,
各需要地はより遠方の公園を利用せざるを得なくなった。このため,最大利用距離は 18.89 と大きく悪化し,
利便性が低下する解となった。
一方,設定3のように,利用人数の制約を緩めると,大規模なハブ公園と小規模な近隣公園という多様な規模の公園配置が可能となり,
最大利用距離は 10.72 と最も短い値を達成した。これは,制約が緩められたことにより,
住民全体の利便性向上に最も寄与する配置パターンが得られたことを示している。
本研究は,「最大利用距離の最小化」を目的とした公園配置の数理最適化モデルを構築し,
異なる制約条件下での数値実験により,コストや法規制を度外視した理想解と,
厳しい制約下での妥協解を定量的に比較検討するための有効な手段を示した。
数値実験の結果は,利用人数の下限を緩めるなど,制約を柔軟に設定するほど,
需要地に近い候補地に公園を配置でき,全体的な利便性が向上する傾向を明らかにした。
しかし,本モデルは費用や法的な制約,時間による動的な需要地の変化を考慮していないという限界がある。
今後はコストを目的関数に組み込む多目的最適化や,より現実に即したランドマークの影響の定量化を行うことが今後の課題となる。
[1] スポーツ庁. 令和 6 年度全国体力・運動能力,運動習慣等調査結果. 第 2 章. 2024.