パートナー情報

筑波大学 TA 森正晴 山下穂乃果 吉岡聖

はじめに

タブレットのアプリ配置を最適化してアプリの位置を見つけやすくしたいという高校生の声から始まった。
本研究のきもはアプリの見やすさをどのように定義するのかという点にあるが,高校生と議論を重ねた結果,
配置のパターンを複数作成し,アンケートベースで見やすさの検証を行うことにした。

問題設定

本研究では,タブレットアプリの配置を最適化する問題を扱う。満たしたい条件は以下である。

  • 画面の中から使いたいアプリをすぐに見つけられるようにする
  • 画面上のアプリの見栄えも重視する(きれいに見える配置にする)

見つけやすさという定義が曖昧であるため,本研究では配置パターンに合わせて,配置場所に重みをつけることで定式化を行なった。

定式化

基本モデル

基本モデルでは,アプリの使用頻度と配置場所の重みを考慮し,アプリの見つけやすさの総和を最大化することを目的とする。
見栄え(色や濃淡)については拡張モデルで考慮する。

集合とパラメータ
  • I:配置するアプリの集合
  • J:配置される場所(ホーム画面上の配置候補点の集合)
  • C:アプリの色集合
  • wj:配置 j の重み(jJ),視線誘導・アクセスしやすさに基づく
  • fi:アプリ i の使用頻度(iI
決定変数
xij ∈ {0, 1}, iI, jJ (1)

アプリ i を場所 j に配置する場合に 1,そうでない場合に 0 とする。

目的関数(最大化)
maximize ∑iIjJ fi × wj × xij (2)
制約条件

アプリは 1 つの場所に置かれる:

iI : ∑jJ xij = 1 (3)

場所には最大 1 つのアプリが配置される:

jJ : ∑iI xij ≤ 1 (4)

拡張モデル 1:フォルダを考慮したモデル

概要

基本モデルでは,すべてのアプリを画面上に直接配置することを前提としていた。しかし,実際のタブレット利用においては,
アプリをフォルダにまとめて整理することが一般的である。本拡張モデルでは,アプリをフォルダに格納するという選択肢を導入する。

フォルダを利用することで画面上のスペースを節約できる一方,フォルダ内のアプリにアクセスするには追加のタップが必要となる。
この「アクセスしやすさの低下」をペナルティ wfolder として目的関数に組み込むことで,フォルダ利用のトレードオフを表現する。

追加の集合とパラメータ
  • F:フォルダの集合(各ジャンルに 1 つ対応)
  • K:アプリのジャンルの集合
  • wfolder:フォルダ利用による価値の低下量(ペナルティ)
  • Cf:フォルダ f の最大容量
  • M:十分に大きな定数(例:全アプリ数 |I|)
追加の決定変数
  • yjf ∈ {0, 1}:フォルダ f を場所 j に配置する場合に 1
  • zif ∈ {0, 1}:アプリ i をフォルダ f に格納する場合に 1
目的関数

全アプリの「見つけやすさの総和」を最大化する:

maximize ∑iIjJ fi · wj · xij+ ∑iIjJfF(wjwfolder) · fi · yjf · zif (5)
制約条件

アプリからみた制約(各アプリは画面上の 1 地点または 1 つのフォルダのいずれかに属する):

iI : ∑jJ xij + ∑fF zif = 1 (6)

場所候補から見た制約(各地点には 1 つのアプリまたは 1 つのフォルダしか置けない):

jJ : ∑iI xij + ∑fF yjf ≤ 1 (7)

フォルダ配置の制約:

fF : ∑iI zifM · ∑jJ yjf (8)
fF : ∑jJ yjf ≤ ∑iI zif (9)

同じフォルダの複数配置を制限:

fF : ∑jJ yjf ≤ 1 (10)

フォルダ容量の制約:

fF : ∑iI zifCf (11)

拡張モデル 2:色と濃淡を考慮したモデル

概要

基本モデルでは,アプリの「見つけやすさ」のみを考慮していたが,ユーザーにとっては画面の「見栄え」も重要な要素である。
本拡張モデルでは,アプリアイコンの色と濃淡に着目し,見栄えの良さを定量化する。

具体的には,同じ色や同じ濃淡のアプリが近くに配置されると視覚的に区別しにくくなるという仮定のもと,
近接する同色・同濃淡アプリに対してペナルティを与える。ペナルティは距離の逆数に比例するため,
近ければ近いほど大きなペナルティが課される。

この目的関数は xij · xkℓ という非線形項を含むため,
混合整数線形計画問題(MILP)として解くために線形化が必要となる。

追加の集合とパラメータ
  • S:アプリの色の濃淡集合(S = {s1, s2, s3}:濃,薄,普通の 3 段階)
  • aic ∈ {0, 1}:アプリ i が色 c である場合に 1
  • bis ∈ {0, 1}:アプリ i が濃淡 s である場合に 1
  • djℓ:場所 j と場所 ℓ の物理的な距離
  • Pc:色に関するペナルティ係数
  • Ps:濃淡に関するペナルティ係数
目的関数(ペナルティ追加版)
maximize ∑iIjJ wjfixij
− ∑cCi,kI; j,ℓ∈JPc · 1 / djℓ · (xij · xkℓ · aic · akc)
− ∑sSi,kI; j,ℓ∈J Ps · 1 / djℓ · (xij · xkℓ · bis · bks)
(12)

この目的関数は非線形であるため,線形化を行う。

目的関数の線形化

補助変数 yijkℓ を導入し,以下の制約を追加する:

{y
ijkℓ

x
ij

y
ijkℓ

x
kℓ

y
ijkℓ

x
ij

+

x
kℓ


1

(13)

線形化された目的関数:

maximize ∑i,j wjfixij
− ∑c,i,k,j,ℓ Pc · 1 / djℓ · aic · akc · yijkℓ
− ∑s,i,k,j,ℓ Ps · 1 / djℓ · bis · bks · yijkℓ
(14)

拡張モデル 3:タブレット向け簡易モデル

概要

拡張モデル 1 および 2 は表現力が高い一方で,決定変数や制約条件の数が多く,計算時間が実用的でないという課題がある。
本拡張モデルでは,タブレット利用における実用性を重視し,以下の簡略化を行う。

  • フォルダ機能を省略し,すべてのアプリを画面上に直接配置する(基本モデルと同様)
  • 濃淡によるペナルティを省略し,色のみを考慮する
  • すべてのアプリを必ず配置する制約に変更する(≤ 1 から = 1 へ)

これにより,拡張モデル 2 と比較して計算量を大幅に削減しつつ,見栄えを考慮した最適化が可能となる。

定式化

各アプリは必ず画面上の 1 地点に配置される:

iI : ∑jJ xij = 1 (15)

各地点には 1 つのアプリしか置けない:

jJ : ∑iI xij ≤ 1 (16)
目的関数
maximize ∑iIjJ wjfixij− ∑cC; i,kI; j,ℓ∈JPc · 1 / djℓ ·(xij · xkℓ · aic · akc) (17)

実行結果

本研究では,基本モデルのみを用いて数値実験を行った。また以下のように streamlit による Web アプリケーションを作成することにより,
高校生の実験の負担を軽減した。設定できる値としては以下である。

  • アプリの使用頻度
  • 配置場所の重み
  • ドック数とメインスペースのアプリ配置

アプリの使用頻度,配置場所の重みについては CSV ファイルでの一括入力を可能とした。

図1:streamlit によるWebアプリケーション

実験設定

場所のインデックスと重み

タブレット画面を 6 列 × 5 行の 30 箇所と,下部のドック領域 6 箇所の計 36 箇所に分割した。各場所には 1 から 36 のインデックスを割り当てた。
図 2 に場所のインデックスと重みの設定を示す。

図2:場所のインデックス(左)と場所の重み(右)

場所の重み wj は,「見つけやすさ」に基づいて設定した。見つけやすさの定義については,以下の仮説を立てた。

仮説:画面の真ん中が最も見やすい

この仮説を検証するため,2 クラス 84 人の高校生を対象にアンケート調査を実施した。アプリ配置を以下の 5 パターンに分類し,
どの配置が一番見つけやすいかを回答してもらった。

  • 左上に重みを置いた配置
  • 右上に重みを置いた配置
  • 真ん中に重みを置いた配置
  • 左下に重みを置いた配置
  • 右下に重みを置いた配置
アンケート結果

アプリ数 16 個(回答者 47 人)とアプリ数 23 個(回答者 57 人)の 2 条件で調査を行った。結果を表 1 に示す。

表 1:配置パターン別の見やすさアンケート結果

配置パターン アプリ数 16 個 アプリ数 23 個
左上 78% 54%
真ん中 6% 19%
右上 8% 14%
右下 2% 7%
左下 4% 5%

アプリの個数を変えても,左上に重みを置いた配置のほうが見やすいという人が多かった。これは,
視線誘導の観点から左上から見るということに関係していると考えられる。図 3 にアンケートで使用した配置パターンの例を示す。

図3: アンケートで使用した5種類の配置パターンと回答結果

おわりに

本研究では,タブレットのアプリ配置最適化問題を定式化した。元となった,高校生のアイデアは非常に面白く大学生の私たちにとっても新鮮であった。
特にどうしても定量的に測れるものに対して最適化を行うという発想になりがちであるが,あえて見つけやすさや見栄えといったものをうまく定義して,
最適化問題として扱う点が非常に興味深いと感じた。

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